深い霧で守られた村、イジンデル。 その村を囲う鬱そうと茂った木々の中を、トランは慣れた様に歩く。 そんなトランに肩車をしてもらっているアルテアは、鼻歌でも歌いそうだ。 「アルテア、今日は特に機嫌がいいですね」 「そうだな、てんきがいいからきもちがいいな!」 トランが高い位置にある顔を見上げながらそういうと、アルテアは笑う。 「トラン、ゆびきりってしってるか?」 「ゆびきり?」 「こゆびとこゆびを……こうして、やくそくをかわすことだ!」 言いながら、トランの小指と自分の小指を絡めた。 きょとんとしているトランを見ながら、ふと表情を緩める。 「――かならず、ここにかえってこい。やくそくだ!」 「はい、アルテア」 明日になれば、極東に行ってしまう。そんなトランを見つめて、アルテアはぐっと本音を堪えた。 ――いくな、なんていえない。いったら、トランはこまるから。 「やくそくだからな!」 「ええ、ちゃんと守ります」 「やぶったら、針をのむんだぞ!」 「……ソレはちょっと困りますね」 少々胡散臭い笑顔を浮かべて言うトランに、アルテアは絡めた小指を離して。 「よし、きょうはもうすこしあるくぞ!」 「はい」 また無邪気に笑った。 色々すみません。 |